SALT,SUN & TIME

ローザンヌ備忘録

あるクラブの幻

霞町にディスコというよりクラブのハシリとでもいうべきお店があった。服飾系の専門学校に通ってる友人に連れられて初めて入った時は、あの頃でいうスノッブな雰囲気が漂っていて「あ、こりゃ場違いだわ」とすぐに感じたもんだった。でも、せっかく連れてきてくれた友人の手前帰るわけにもいかず、大音量のディスコミュージックの中、平静を装いウォッカ・トニックをチビリチビリと口に運んでいた。
その店に行く前に「これいいんだよ」と見せてくれたグラムロック風ジャケットのLPを友人がマスターらしき人に手渡してるのが見えた。
ディスコミュージックがひとしきりかかって店の中に熱気が充満して、ちょっと参ったなと思ったその時だった。
🎵だだ どん シャリシャリ it was late last night
シャリ感半端ないって!のイントロとソフトな、だけどしっかりした高音の男性ボーカルが聞こえてきた。
それまでのギンギンギラギラ体臭ムンムンのディスコミュージックとは打って変わって一陣の風が吹くような清涼感すら漂うその曲にギラギラのフィーバーたちは、我に帰ったかのようにサーっとボックスシートやカウンターに腰を落ち着け始めた。
曲もそんな様子も僕にとってはホント新鮮で、白けた頭がスッキリ、爽快感が体中に広がっていくような気がした。そしてちょっと救われた。
それがレインボーヘアーのトッド・ラングレンとの最初の出会いだった。
あっという間に🎵 I saw the light が終わるとクラブにはまた当たり前のディスコミュージックが大音量で流れ、フィーバーたちが群れをなして踊り始める。
後で友人に聞いた話によるとマスターは「ちょっとうちでかける音じゃないね」と言ってたらしい。僕は、あのアルバムでずっと体を揺らしていたかったのにな、と思ったんだけど。
もちろん翌日には、そのアルバムを求めてレコード屋を巡ったのは言うまでもない。
なんだかそんなことも思い出した。で、そんな友人の音楽的センスには今も脱毛じゃなくって脱帽している(笑)。