SALT,SUN & TIME

ローザンヌ備忘録

映画館と漬物

先日読んでいたエッセイの中に映画館で漬物を売っていたという一文があった。
好きな種村季弘さんの本の中で、氏が学生の頃であったというから今から50年ぐらい前の話。
池袋の東口にあった「人世坐」という映画館で、ロビーに漬物の桶が20本ほど、そしてなんと計り売りの酒もあって、休憩時間に漬物で一杯飲めたっていうからなんとも嬉しい映画館だったんじゃなかろうか。ってオレだけか(笑)。酒と漬物の臭いが蔓延してた映画館なんて、映画そのものを楽しみにやってきた他の人にとっちゃ迷惑千万な話だったのかもしれない。
オーナーの三角寛山窩研究家、山窩小説家で有名な人で、その昔、古本屋の外の均一本のワゴンの中にその著書がゴロゴロあった時期がある。その三角寛が漬物研究家でもあって、家で漬けてたものを販売していたらしい。趣味が実益を兼ねるって寸法で、なかなかいい方法だな、なんて思う。アタシも古本屋をやりながら家で漬けてる梅酒や好きな地酒や肴を出せる店が出来たらなぁ、なんてズーッと思ってるんだけれど、先立つものがねぇ、、、。
ここまで書いて、「人世坐ね、はいはい」ってわかる人がおられると思われる。そう、現「文芸座」の、いや、今は「新文芸座」というのか? の前身なんである「人世坐」というのは。
その昔、高校時代から大学にかけて一番お世話になったのが新が付く前の「文芸座」だった。上が洋画で地下が邦画と分けられていて、当時2本立てで確か200円だった。だから高校生も見ることが出来た。ほんとにありがたい映画館だった。
あそこでベルイマンブレッソンゴダールトリュフォー、ATGに日活ロマンポルノなんかを見て、無為な時間を過ごし、悶々としていたのである(笑)。
大学なんてもんにいってた頃は、映画を見終われば、近くの「ます久」にしけこんで、100円の熱燗で今見た映画の話を、200円の湯豆腐とそれこそ100円の漬物を肴に終電まで飲んでいたなぁ。
なわけだから、映画館に漬物とお酒があればそこでずーっと映画の話ができて、妙な友人も出来たんじゃなかろうか、と思うわけなんだけれど。どっかにできねぇかな、そんな映画館。もしできたら、たまに行くだろうになぁ。突然無くなっちまった、下北の映画館あたりがそんな感じで復活してくれたら(もしかして、復活してる?)うれしんだけどなぁ。