SALT,SUN & TIME

ローザンヌ備忘録

われはうたえども やぶれかぶれ

本のオーラなんてことを確か誰かが書いてました。だから、紙媒体の本は無くならないとかなんとか、、、。私もその意見には全面的に賛成です。オーラに関していえば、本だけではありませんが。
なわけで、久しぶりに古本屋をのぞいて、「あーあ、ナーンも無いや」と帰りかけたその時、ちらっと目をやった書棚からそのオーラは放たれたのでした。
そのオーラのほとんどは背文字で、表題の「われはうたえども やぶれかぶれ」の全てひらがなのタイトルもいいんですが、その書き文字の持つなんとも飾り気のない素朴な感じが“ふわん”と私の心をひきつけたのでした(左参照)。
引き抜いて箱に書かれたタイトルを見てみると、やはり同じ書き文字で四角くうまい感じに収められていて、なんていうんでしょう、絵的な書き文字が、これまたいい感じでした(右参照)。
「一体誰なんだろう?」
と早速表紙をめくりタイトル文字の作者を探してみると
『題簽 畦地梅太郎
と書かれてありました。
「うん?」と思ったのは、あの版画家の畦地梅太郎というところもありましたが、この“題簽(だいせん)” っていうのは一体?というのが先にきて、すぐにパソコンで調べてみたわけです。
『和漢の書籍の表紙に題名などを記してはる細長い紙片または布片、またはその題字』。
と、出ておりました。「なるほど、そんな書き方もあるんだ」と勉強になりました。
で、畦地さんですが、山本周五郎の文庫でくらいでしか知らないのですが、なんだか心惹かれる版画家だったのでとても嬉しくなりました。
谷中安規の版画といい「きっとあまり飾り気のない素朴な子供っぽいものに惹かれるんだろうな、オレ。AORは似合わないわけだ」というのが改めてわかったのでした(笑)。
小説の内容は、時におかしく、時ににやるせない、詩人でもある室生犀星の視座がちりばめられた闘病記でありました。なかなか面白い読み物でもありました。やはり、オーラはあるし、信用できるものです。なんちゃって(笑)