SALT,SUN & TIME

ローザンヌ備忘録

最後のクレイジー

もう随分前に、“特に犬塚弘さん(もうこの人と桜井センリさんしか残ってないけど)、いい味出してんなぁ。「馬鹿が戦車でやってくる」でもちょっと無理があるんだけどいい感じなんだ(笑)”なんてことを書いたことがある最後のクレイジー犬塚弘の「最後のクレイジー犬塚弘」をやっと読みました。その前には小林信彦と萩本欣一の対談「ふたりの笑タイム」なんていうのも読んでました、そういえば。で、ワンちゃんの本ですが、これ聞き書きなんで話があっちゃこっちゃに飛んで、きっと話してる間にあれこれ思い出してそんな感じになっちゃったんでしょうが、もちょっとうまく整理できなかったもんかな、なんて思いましたが、ま、それが本来の聞き書きの味であります、なんて言われちゃうと、そうかもしれない、なんて思っちゃったりして難しいですな(笑)。しかし、ワンちゃん、やっぱりあの見た目同様、育ちがいいスマートでダンディな方なんですね。自分が当たり前にやってることをメンバーのみんなに「恰好つけんな」とよく言われてたらしいんですが、そういわれるのが癪にだったらしく、そんなつもりでやってないって何度も出てくるんですよ(笑)。私なんかも育ちがあまりよくないんで「恰好つけてんな」なんて感じちゃって、育ちが出ますねやっぱり(笑)。ま、あの当時ジャズで飯を食ってたハイカラな人たちなんで、それこそ育ちのよくない人はいないんですが、中でもワンちゃんは群を抜いてよかったんじゃないでしょうか。そんなとこがこの本の随所に感じられました。あれだけ無責任で人気のあった植木等の辛さや、これは有名だけど、谷啓の不思議さ、古沢監督への恨み(笑)や山田監督への賛美(笑)なんかがワンちゃんの持つその育ちのよさの優しさの中で書かれてあってなかなか面白かったっす。あの楽屋で谷啓に「スターダスト」を吹いてもらってうっとりと聞き入って、演奏が終わってから二人して黙ってる、そんな時間が好きでした、って書いてあるところがなんか頭に浮かんで目頭が熱くなりました。どっちゃにしてもやっぱりクレイジーキャッツは不滅ですね。