SALT,SUN & TIME

ローザンヌ備忘録

小林信彦、色川武大、そして、、、

そういえば、色川武大さんのエッセイにも怪談があったなあ、と思い出した。
ある日、あるところでばったり世話になった知り合いの作家と出会い立ち話をする。
数日後、他の作家のところへ行ったおりにその話をすると「その人ならもうとっくに亡くなってるよ」と聞かされる話なのだが。この話は、実話だと本人も断り書きをしているということと、色川さんが亡くなってから出版された奥さんの「宿六、色川武大」にも思い出話として出てきたりして、少し背筋が寒くなった覚えがある。
色川武大という人も不思議な妄想的な作品を数多く残した作家なのでなにやら怪談話めいたものが多い気がする、そういえば。
で、タイトルの話へと
誰だと思います、、、、すぐに思い浮かんだのが、井上ひさしさんなんですよ。

色川武大さんの浅草芸人の生活を描いた「あちゃらか・ぱい」の解説(この解説は、ちょっとしたもんなんで、本屋に行ったときにでも目を通していただきたい)や昨年ちくま文庫で出たタイトルを忘れてしまいましたが、山田洋次さんとの対談の中で浅草時代の渥美清の思い出を熱く語っていた氏の姿が印象深かったことが大きなきっかけでしょうか。
そこにも書かれている通り、井上ひさしさんは、ストリップ劇場で働きながらコントなんぞも書いていた時期があるんですね。てんぷくトリオのコントもだいぶてがけていたりして(井上ひさし笑劇全集上下がてんぷくトリオのコント集です)。今読むと少し辛いものがありますが(笑) 
井上ひさしさんは、舞台のそでから、色川武大さんは、客席から、食い入るように舞台をながめていたんだなあということがそれらの本でよくわかるわけです。小林信彦さんもまたしかりでありましょう。
小林、井上の共通項は、なにしろ良く勉強をしているということ。井上ひさしさんの「パロディ志願」などのエッセイを読むとその辺のところが良くわかります、実によく勉強をしていて逆に小難しくなっちゃったりして(笑)。
それにくらべると色川武大さんは、見て体験した自身の細やかな記憶の断片を自分自身の中に今一度戻して、自分自身を投影しつつ描き出すという、自分がどうしても出してしまう(そこが私にはたまらないわけですが)作風なんですね。
でも、それはそれ、三方ともなにしろばかが付くほどのコメディ好きであったことは確かだと思うんですね。
で、それがどうしたんだ、なんなんだといわれると困っちまうわけですが(笑) なにしろ、今のところ、この三人に並ぶべきものがいないんじゃないかな、とそう思うわけなんですよ。
と偉そうな事を書きながら、井上ひさしさんの小説ってほとんど読んでないんですね、そういえば。あの本の分厚さにどうも弱いんです(笑)
「喜劇役者たち」ぐらいは、なんとしても読んどきたいとは思ってますが。そんじゃ、また。