SALT,SUN & TIME

ローザンヌ備忘録

ぼくのユーミン

先日、なにげにテレビのチャンネルをかえると懐かしい曲をうたってる東洋美人(ていう旨い酒もあります)に出くわした。
なんだか大きな舞台で気持ちをこめて懐かしいそのうた「雨のステーション」をうたっていた。
曲が終わるとご本人のユーミンも登場。そして彼女もうたいはじめた。うたは、もう随分と経ってしまったけど、荒井由実名義でやったライブよりはいい感じで、昔のユーミンを思い起こさせるような気がした。
荒井由実なる女の子のアルバムを聴かせてくれたのはやっぱりKだった。
「いいんだ、これ」「はっぴいえんどを辞めた細野さんと茂さんがバックをやってるんだ。キャラメル・ママっていうんだけど」
といってさも嬉しそうに聴かせてくれたんだ。

高音にいくとふらっときて、微妙に震えるファルセットになる彼女の歌声と、なんだかこちらのこの辺をキュンとさせる(男だってキュンとなるよね?)その詞にメロディに、そのメロディをより引き立たせるキャラメル・ママの音に魅了されたんだと思う。
彼女のうたごえには、なぜか「オレが守ってやらないで、誰が守るんだ」なんて、男の子心をくすぐる何かがあったし、そのころ読んでいた薫くんシリーズの中の由美ちゃん(お、同じゆみちゃんだ!)を連想させるようなところもあって余計に気になって仕方が無かった。
聴かせてもらった翌日、こづかいを前借して、即、「ひこうき雲」を買いに走った。早く聴きたくてたまんなかったから、ほんとに走っていったんだ。
聴き続けるうちに、そのうたに感情移入も甚だしくなり、「きっと言える」を聴けば、好きな女の子に気持ちを打ち明けるべくあわてて電話をしてしまったり(それもまったく面識も無いうちの高校じゃない幼なじみの友人の高校の入学アルバムで眼に飛び込んで、どっきんとなった女の子、日村さんていったんだ、になんだから参っちゃうでしょ。当然相手にされなかったけれど)、曇り空になると約束があるにもかかわらず外に出たくなくなったりもした(すっぽかされたやつとは数日、口も聞かない状態が続いたのはいうまでもない)。そういえば、チャイニーズ・スープの豆になりたいと言ってた人がいたのも知っている(それは、松平維秋さん)。
いちど生のユーミンを聴きに行ったことがあるんだ。ちょうど「コバルト・アワー」を出した頃で、NHKの「若いこだま」の夏休み特別企画の収録でなんだけど、とても感激したのを覚えてる。ま、その前にコンサートなんていったら、友人から券をもらったアベレージ・ホワイト・バンドのコンサートぐらいだったからなおさらかもしれない。
アベレージ・ホワイト・バンドの券は、ニール・ヤングのコンサート・チケットのおまけで付いてきたやつらしく、友人は「こんなの知らないからやるよ」ってくれたんだけど、中野サンプラでやったそのコンサートは、初めてそんなコンサートに出かけて、舞台下まで駆け下りてってしまったというほど興奮したコンサートだった。その話は、また今度。
で、生ユーミンなんだけど、ホット・パンツからスラーッとしたなんとも格好のいい脚が出てて、なにしろスタイルの良さにびっくらこいたのをよく覚えている。ちょっと正視できないようなかわいらしもあった。その収録で何度も録りなおしたが「雨のステーション」で、あのさびの♪あーめのースティション  がどうしてもうまくうたえなくて困ってる姿がとても印象に残ってる。何度もダメだしをしてたのが、そういえば、ミキサー室の松任谷さんだった。
それから一気にブレイクし始めるんだけど、テレビの主題歌♪泣きながら〜 ちぎいった写真を〜 の「あの日に帰りたい」が出た頃からほとんど聴かなくなってしまうんだな、これが。
昔からそうなんだけど、周りが聴き始めるともう興味が薄れてきてしまうんだ。そういうところってない?あるでしょ?もう、ぼくのユーミンじゃないなんていう感じで。♪新しい誰かのために〜 との出会いを求めてまた旅に出ることにしようなんていう感じで。だから少しは気になってたんだけど聴かなくなっちゃったわけなんだ。
それからウン十年経って、その荒井由実名義でやったライブのCDを懐かしさのままに買い求めたんだけど、バックのキャラメル・ママの面々(細野さんは、いなかった、確か)の音(アレンジもほとんど当時のまま)は、まるで変わっていないのに(「あの日に帰りたい」の山本潤子スキャットも変わっていなかった)そこでうたっているのは、荒井由実ではなく、音程のふらつく朝丘雪路であったことにとてもがっかりしたんだよ。
で、ぼくの心の中のユーミンもそのうたとともにふらつき、もろくも崩れ去っていったわけ、つらい現実を胸に突きつけながら。なんていう大袈裟な言い回しは、的外れかもしれないけどそんな気持ちになったんだ。
自身の歳も振り返ってみたりして。誰も責められるはずがない話なんだよね、これは。
なんだかとりとめのない話になってしまったけど、現在は、大家然となってしまったユーミンだけど大好きだったんだユーミン

古本屋「山風蠱」http://www.geocities.co.jp/MusicStar-Piano/9491/newpage3.htm
滋味にやってます。ちょっとのぞいてってください。(ぺこり)