SALT,SUN & TIME

ローザンヌ備忘録

天井桟敷の人々

suzukimondo2008-05-31

といってもあの有名な映画の話ではない。
随分昔、文芸座にその映画を見に行った時のことを当時のアッシはこんな風に書いている。
―行ってよかったと、まずは思った。ストーリーはたいしたものではないが、天井桟敷の人々のあの得体の知れぬパワー、力強さ。活き活きしていた。それに応えるかのようなジャン・ルイ・バローのマイムも素晴らしい。あのマイムは一日中見ていても飽きないだろうな―
ちょっと、はしょったけれどなんともエラソウに書いてる(笑)
その映画「天井桟敷の人々」に影響を受けて寺山修司が旗揚げしたのが「演劇実験室 天井桟敷」だ。と、どっかに書かれていた。早い話、たいして興味がなかった、天井桟敷状況劇場だって、つかこうへいだって、演劇全般に興味はあまりなかった。
なのになんでこの本を読みたくなったのか、わからない。これも運命ってやつ(笑)
寺山修司のエッセイなり、映画は、特に映画は、裸が多いんでよく見に行ったな(笑)
田園に死す」だったろうか、あの農家の囲炉裏端が突然渋谷の雑踏に変る一転瞬には、「あっ」っと度肝を抜かれたし、田んぼの真ん中でギターをかきむしりながらうたい叫ぶ三上寛も忘れられない。
陽の当たらないボクサーや野球選手のことを書き綴ったエッセイ。そういえば、「脱出王フーデニ」にのことを書いたエッセイなんか面白かったな。
ってどんどん本とは関係ない話が広がっちゃう、っていうところがアッシの場合大好きで、それが正しい本の読み方ではないかと常々思ってるわけで。音楽にしたって、映画にしたって、日常全てがそうなんだけど(笑)あるエライ先生が、記憶の扇動装置なんてことを言ってたけど、さしずめアッシの場合は、記憶の汲み取り装置と言っておきたい(笑)
で、この本、その天井桟敷の劇団員の人々が、あの頃は何を思い、今何を思い、何をしているのかを追ったルポなのである。簡単にいえば、「天井桟敷劇団員版、あの人は今」である。
みんな劇団にいた頃のことが多かれ少なかれトラウマになっているということがよくわかる。そこからどう抜け出し、またはどう折り合いをつけて現在、そしてこれからを生きていくかなんかが描かれているわけだ。天井桟敷好きには、たまらない話だろうけどアッシには、そんなに面白い話が並んでるわけじゃなかった。でもなぜか惹かれるものはあった。ぼろきれを引きずるように過去を引きずりながら生きてく姿がなんともな感じがした。考えてみるに陽のあたらないボクサー、博打に手を出しどん底に落ち込む野球選手なんぞを取り上げていた寺山修司のエッセイに、これは、やっぱり引きずられているような気がした。この本のルポライター萩原朔美、「ビックリハウス」の編集長であった、また萩原朔太郎の孫である萩原朔美もまたそんなトラウマを抱えてしまった人だったのだ。


古本「山風蠱」http://www.geocities.co.jp/MusicStar-Piano/9491/newpage3.htm

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