SALT,SUN & TIME

ローザンヌ備忘録

野坂昭如のドキュメントを見る。

反響が大きかったゆえのアンコールだそうで、、、。
脳梗塞で倒れ、もうどのくらいになるのか、時おり挟まれる現在の写真(先日、前立腺がんだと公表したアラーキーが撮ったもの。こういうのを撮らせたらやっぱり天才だな、この人は)は、痛々しく、無様でもあるが、その生きんとする表情がありありと画面いっぱいに映し出されて、なぜか背筋をピンと伸ばさにゃあかん、と同時に背中が粟立つような思いがした。そして二重写しのように重なったのが、その前に倒れた大島渚だった。
あれはいつだったんだろうか、二人が最後に繰り広げたあのバトル。
「ことほぎのぉ〜」で、野坂の右フックが大島の左あごに炸裂、めがねを飛ばされ少しよろけはしたものの、大島もマイクで脳天を強打。それをひっしと自らの脳天で、もっと打てみろ、といわんばかりに受け止める野坂。
血気盛んな若造じゃあるまいし、いい歳こいたオヤジがなにやってんだか、なんて笑っちゃったんだけど、この時の血気盛んさが、歳相応の血管には荷が重過ぎて、今のような状態に、、、なんてことを書こうと思ったわけじゃなく、以前にも書いた五木寛之北山修の対談の話が頭をもたげてきて、、、加藤和彦自死ともなぜだか重なって、うーん、なんていう気持ちになったんだった。
野坂は、沖縄戦の悲惨さを題材に、まだ後三冊は本を書くと豪語してるようで、大島も当然メガホンを口まで持っていけなくとも、取りたいと思っているに違いないのだ。って、いったい何を俺は書きたかったのか分からなくなってきた。焼け跡闇市派の彼らとベビーブーマー団塊の世代を比較しようとしてるわけじゃなく、心のどこかが、その下の世代の私も含め脆くなってしまっているのじゃないのだろうか、なんてことを考えてしまったもんだから、こんな話を書いてしまった、私がバカだった。どこにも着地できなくて、、、(、、、が多くなってきた)。でも、野坂のあと3冊、大島のまだ撮るだろう映画を読まずには、見ずには死ねない、いや死なないということだけは書いておきたいのである。おしまい。(この中途半端がなんともキュート(笑)