SALT,SUN & TIME

ローザンヌ備忘録

笑わしたい!!

なんともこのネーミングがいいじゃありませんか! 「荒鷲隊」をもじって「わらわし隊」。もちろんそこには、「笑わしたい」という欲求も含まれてるわけで、お笑いでめしを食うてるもんの哀しい、じゃなくって素晴らしい性が出てていいっすね! 流石っすね! 蟹蔵っす(笑)
確か、志ん生文楽と一緒に戦地に慰問に行って、ウォッカガブ飲み死をはかったけれどなんともなかった、なんていう話を読んだことがありましたし(あ、あれは、出征でだったかな?)、古川ロッパの回想録かなんかでも慰問の話ができた気がします(あきれたぼういずだったかな?)。「わらわし隊」の名もその時一緒に読んだ覚えがあります、そういえば。みんな行ってんですよね、芸のある人たちは。
それにしても現存してた戦地での写真、兵隊さんたちが「わらわし隊」を見ながら大笑いしてる写真には、こちらさえもほっと安堵させる慰安(&シルビア・クリステル(笑)を感じさせて、笑いの素晴らしさを再認識させてもらえたような気がしてます。
そんな慰問団「わらわし隊」の一輪の花がミス・ワカナで、アメリカでいうならば、あの慰問に行ったマリリン・モンローになるわけで!? なんと森光子さんの師匠スジに当たる人だったんですね。それにしても、その証言をする森さんの老いた姿、ろれつがうまく回らず、一点を見据えたというか、どこを見てるのかわからないその視線、表情のなさには少なからず驚かされましたが。ま、それも置いといて、ミス・ワカナ玉川一郎コンビにその後に続く夫婦漫才のルーツを見たような気がしました。みやこ蝶々&南都雄二、人生こうろ、唄子&啓介などなど、あの男をぼろくそに言って笑いを取るルーツ、あれのオリジナルですね。それに加えて各地の方言を取り入れ、戦地においては、中国語も取り入れ笑いを取るその才能には、目を瞠るものがありました。しかし、お決まりのように身を持ち崩し、最後はヒロポン中毒になって亡くなってしまう。戦争体験がもとでというようなニュアンスを感じましたが、当時ヒロポンは合法だったし、これを飲んで頭をスカッとさせて、何日も徹夜して小説を書いてた作家もたくさんいたわけで、戦争体験がうんぬんに関しては、ちょっとこじつけっぽさが先に立ってって、どうしても戦争にからめなきゃならないんだから、仕方ないと言えば仕方ないんですが、ちょっと残念。それとこれは後から聞いた話ですが、このコンビ、吉本から松竹?に引き抜かれたという引き抜き事件も起こしたりして、そのあたりもなんらかの影響があったりするような気もします。昔読んだ、あきれたぼういずの引き抜き事件っていうのもなかなかにショッキングな話で、命からがら、夜逃げ同然に古巣を飛び出した、なんてことを読んだ覚えがありまして、命がけだったらしいです、脱退も。
なわけで、ドキュメントの主眼がどこに、ミスワカナの生涯なのか、それとも戦場における笑いなのか、それともそれらをうまく絡めた何かなのかがいま一つはっきりせず、こちらの感想も千路に乱れゆく、チチジワミゲル(日本史を思い出しました)なわけでありまして(って、アタシの場合はいつもそうですが(笑)、でも、知らなかったことを教ぇーてもらったし、いろいろ思い出させてもらったんでいつものようにまるで問題ないんですけどね(笑)。それにこんなドキュメントNHKじゃなきゃやらないだろうし。そういえば、玉川スミさん、この方もお元気で、手を引かれて椅子に座っての三味線漫談をやってましたが、この方の証言「切られた首がレンコンのように」「30秒ぐらいして、その切られた所からどばーっと血がふきでた」っていうのもショッキングでリアルでした。こういう人の脚色の少ない戦争体験をじっくりと聴いてみたい、と思ったりもしました。
NHKには、いにしえの演芸史的ドキュメントなり、なんなりをもっともっとやっていただきたい。うたは世につれ、世はうたにつれ、ではありませんが、庶民に身近な演芸関係の歴史なんかを見るとその時の風俗や人やモノやお金なんかがありありと浮かび上がり、とても面白いと思うんですね。それと、これも大きな声で言いたいんですが、日本のロックドキュメント。日本のロックがぐつぐつと生まれ出るところから現在に至るまで、それこそあらゆる人のインタヴューに貴重な映像を盛り込んで、壮大なロックドキュメンタリーロック叙事詩を創ってほしいんですが。どっかで創ってくないかなぁ。よろしくです!!