SALT,SUN & TIME

ローザンヌ備忘録

THREE DECADESの万華鏡はくらがり二十年


ハープとアコギの音が切なく流れ、ドカドンとヤノピとエレキ、ドラムにベースがモコモコとまるで油の浮いたカウチンセーター(今はもう着てる奴も少ないけど)でも着込むように身体にまとわり付いてくる。温かい音だな。もたつくようなリズムだけどその重さも心地いい。町に溢れかえる流行うたとはまるで違うベクトル、やっぱオレ、こんな音が好きなんだなぁ。聴きながらそう思う。
いいことも悪いことも、32年という歳月がみんな溶け込んだかのような音が、自分の32年の想いも甦らせる魔法がそこにはあるんだな。だから未だに魔法を信じているところがあるんだ。
♪たとえ空がくずれ落ちてこようと 信じたいお互いの心を
淋しさに閉じ込められても 恐れないで開いてごらん心を
誰にもからみついた心の鎖を 解き放せ老いぼれてしまう前に
なんだかスタン・バイ・ミーのオヤジ版のような何でもないうたに、胸がつまった。
BOB’S FISH MARKET 32年ぶりの2ndアルバム「Three Decades」



十蘭もまた文庫化された。「十蘭万華鏡」
ありがたいことに珍しい短編がたくさん入ってる。相変わらずの洒落のめした話に男振り、女振りのいい話が並んでいる。少し小振りかな?っていう話しもあるけれど、あの短い中にたっぷりと物語の妙が練りこまれてあるところは流石に十蘭、他の作家、特に今の作家には真似できないもんだろうなと思う。まだ途中、ゆっくりとじっくりと味わいながら読ましてもらおう。できれば、このままシリーズ化して文庫にしていってもらいたいと切に願う。河出さん、よろしくお願い。




徳川夢声の「くらがり二十年」も復刻されてた。それも出来うる限り未収録であった原稿なども入れたもの。これもずっと昔から、ちゃんとした形で読みたいなと思っていたものだからありがたい。夢声の人となりはもちろん、当時のサイレント、トーキーの頃の弁士、楽士の話にそれ以降の日本映画界の話、演劇舞台の話などちょっと毛色の変った芸能史が開陳(珍?)されるのである。この表紙に使われてる若かりし頃の夢声さん、稲垣の吾郎ちゃんにクリソツ(笑)

それと、これも読みたかった本、橘外男の「私は前科者である」も復刊されているのをこないだ見かけた。うーん、なんとか金の工面をせにゃなんわいなぁ。って、そのうち忘れてしまうってのありだな(笑)。
おしまい。