SALT,SUN & TIME

ローザンヌ備忘録

無い

そういえば、久しぶりに下北に出かけたときに忽然と姿を消していた古本屋「幻游社」。
あの違和感には、自分でもびっくりするほどだった。
じーっとそこに立ちつくし首をかしげること約30秒。隣に新しくできたPC屋に吸収されていたんだった。
思わずその店のお兄ちゃんに、ここにあった古本屋さんは?と尋ねてみると、
「お店たたみましたよ」
っていうなんともそっけない返事が返ってきた。それも‘たたみみました’というこれまた何とも古めかしいものいい。しかし、この‘たたみました’には、もうやんないという意味合いが込められているんだな。
30年以上前になるんだろうか、友人が下宿していた下北を徘徊し始めたころから「幻游社」はそこにあった。便所の匂いとカビの臭みは当時からこないだまで何も変わらず、こちらが探し求めていた本がなぜだかよく見つかった。それも安価で。
そしてもう一軒。レコファンも忽然と姿を消していた。
初めは、駅の反対側の雑居ビルの2階に小さい店を構えていた。中古と妙な輸入盤が充実していて、こちらもよく通ったな。
って、下北はそれこそ知らない間に目まぐるしく変わっている街だった。
ただ、自分が足繁く通ってた店が無くなってしまった、それも30年は続いていただろう店が、そのたたずまいとともに忽然と姿を消してしまったその驚きに自分ながらに不思議な気がした。