SALT,SUN & TIME

ローザンヌ備忘録

DAY IS DONE

もちろん初めてNick Drakeを耳にしたのは、そしてあの緑のふちに物憂げに外をのぞく彼の姿が映ったアルバムを見たのも渋谷のブラック・フォークだった。
お金が溜まったら新宿レコードか、馬場のOpas-1で真っ先に買って帰ろう、そう思った。
でもどこにもそのアルバムはなかった。とっくのとうに廃盤だった。
だいぶ経ってから、そう、ほんとにだいぶ経ってから、あの狭い狭い吉祥寺の芽瑠璃堂だったかしら、カセットテープの「Five Leaves Left」を見つけたのは!
LPでなかったのはとても残念だったけれど、小躍りしながら家に帰ったのを覚えている。
それから、まただいぶ経ってから、他の2枚も欲しくていろんな輸入盤屋さんを、池袋、高田馬場、新宿、渋谷に出れば探し回った。
そしてやっとの思いで池袋の音盤洞、ここも狭い輸入盤屋さんだった、で「PINK MOON」を手に入れた。嬉しいことにそれは見開きのLPだった。
と思い出し、今レコード棚をのぞいてみるも見つからない。あれは夢だったんだろうか?
しかし、その後70年も終る頃に大枚をはたいて買い求めた1stから3rdまで全LPが入ってるBOX「Fruits Tree」は、確かにそこにあった。
あれだけ暗く寂しく切ない思いをしたNick Drakeの「Five Leaves Left」であったはずなのに、今こうして聴き返してみるとあまりそういった感じがしない。
思うように生きられずに若くして夭折してしまったその生涯が、どうもその音に深く共鳴して余計ににそんな思いを深く感じさせていたんだろうと今にしては思うばかり。
オーバーダビングだといわれる2nd、その真逆のギターとピアノだけで作られた本当にシンプルな3rdアルバムともに好きなんだけど、やはりこの「Five Leaves Left」は、自身の思いとその思いをよりうまく伝えようと付けられたバックの音がそして聴き手の思いがうまく溶け合った名盤であるといえるんじゃないだろうか。
中でもこの胸が締めつけられるようなDAY IS DONEは、なぜだか必ず目頭が熱くなる忘れられない一曲なのだ。
そして今日も、こんな具にもならない独り言を書き連ね、また一日が終わってしまうのだ。これでいいのだ。