SALT,SUN & TIME

ローザンヌ備忘録

青の時代 なんつーことをね

こずかいを一所懸命貯めてぼくは、初めて邦楽のアルバム、はっぴい・えんどの「風街ろまん」を買った。後を引いたということもあったけど、KもAも好きなんだからぼくも好きになんなきゃ、なんていう気持ちが強かったんだと思う。

でも、聴いてるうちに大瀧さんのうたごえは「けっこういい声してんなあ」に変わっていったんだ。
もつれてダレたうたごえは、ほんの少し突然現われるだけで、あとはとても澄んだうたごえなのだ。だから余計その部分が目立って聴こえてしまうのだ。本人はきっと、その澄んだうたごえが突然嫌になって、ぶっ壊したくなるんだろうなあ、ぼくも優等生ぶったところを突然ぶっ壊したくなるもんなあ、なんてことを感じてひとりうないずいていたのだった。
彼らの創り出す曲も下町ではあったけれどシチーボーイの端くれだったぼくの気持ちにじんわりと合って好きになっていった。松本さんの周りの風景を描くことによって対象物を浮かび上がらせる詞の世界もいいなあと感じるようになった。くっついたり、離れたりの恋愛ばかりの歌謡曲、直接的なもの言いのフォークの世界(なんかそんなイメージが強かったんだ、その頃は)とは違った、ぼくなんかが感じているあるわだかまりやちょっとした幸福感が松本さんの描き出す風景にはいい塩梅に漂っていた気がする。そんな風景をおもむろに切り抜いていく、いやもしかすると切り裂いていたのかな?茂さんのアナーキーなギターフレーズ、「オレ、ホソノ、ホソノ」といってる様な不思議なベースフレーズを弾く細野さん、もろもろ全てがぼくを虜にしていったんだ。


「あんまりうまくないね」
「うん、リズム隊がね」
なんて偉そうなことをいいながらAと二人で文化祭のロック・コンサートを観ていたときだった。
「タイコとベースがあんなに狂ってっちゃやばいよ」
とAがどんどん突っ走るタイコを指差しながら言った。
「それにリードギターもなあ、、、」
と聞き慣れない声が加わった。ぼく等の隣のおかっぱ頭の妙なやつが馴れ馴れしく話しかけてきたのだ。
「なんだこいつ」と思ったのも束の間、そいつもCSN&Yやはっぴい好きで、なによりもあの頃ぼく等の聖典だった「ウッド・ストック」(飯田橋のギンレイ・ホールにKとAと見に行って、CSN&Yと一緒に「青い目のジュディ」をうたったんだ。感激したなあ)を何度も観ていたんですぐに意気投合してしまった。
ディランやバンド、そしてライ・クーダーといった渋目というか、痛好みのミュージシャンが好きなやつで、でもほんとはポール・サイモン、ペンタングルに思い入れがたっぷりあるといったちょっと変ったやつだった、Mは。
で、このMも加わり(Mはフィドルにギター、ピアノも少々という多彩ではあるが、能書きがうるさく、だからちょっと偉そうな感じに受け取られるやつだった)あの甘く危険な香り、じゃなかった、甘く切なく情けない青春の光と影が綾なす、若さと馬鹿さなんかも空回りしちゃうバンド時代が始まっていくのであった。 オー・ロード!! 

って、こりゃ果てしない話になりそうだっと、、、。こんなことしてていいんだろうか?、、、、、いいんです!(笑)