SALT,SUN & TIME

ローザンヌ備忘録

「世界の喜劇人」


古本屋で久しぶりに小林信彦さんの「世界の喜劇人」を見つけた。その昔、新潮文庫の一冊になったものだが、「日本の喜劇人」は、いまだ新潮文庫の一冊として生きているが、この「世界の喜劇人」は、絶版となり古本屋でもなかなかお目にかからなくなった。
当時この文庫を読んでびっくりしたのは、あたかもマルクス兄弟にしろ何にしろ、その喜劇映画を目の当たりに見ているような気分にさせる、その事細かなギャグの描写であった。現在であれば、多少の映画好きで、ある程度文章が書ければ簡単なことであるが、当時ビデオもディスクなんてのもなかった時代にこれだけの描写力を持って表現するというのは、ある意味悪魔でなければ出来ない所業であったろう(笑)。ご自身のあとがきにも書かれているが日本では公開すらされないマルクス兄弟の映画を現地の映画館に何度となく足を運び、事細かに記憶し、ノートに取りまとめられたという、それこそ労作なのである。って、実はそんなことを書こうと思ってるわけではなく、そんなことは、小林さん好きなら誰でも知ってる事だろうし、その辺を一所懸命研究されてる方もいらっしゃるだろうから、お任せしておき、私はもっと些末なことを書きたい。
それは、この文庫「世界の喜劇人」の背表紙を見ていつも「うん?」と首を傾げていたことで、今やっとここでこうやって書けることになんだか嬉しさがこみ上げてくるわけなんだけれど、なはは(笑)。
というのは、背表紙の幅と実際の文庫の幅が合ってないということなのだ。「なーんだ、そんなこと」と思うかもしれないが、いつも見るたびに違和感を覚えていたのである私は。

背表紙、地色がスミの上に白ヌキで
世界の喜劇人  小林信彦   新潮文庫 〔草〕一五八 =6= F 440
と入っているのだが、その地色のスミの部分の幅が本の厚さより少ないために、少ない部分に表紙と裏表紙の白が入ってしまっているのだ(写真を参照してください。って分かりにくい?)。
右端から2ミリ、左端から2ミリ、併せて4ミリ弱ほどの白くなっている。ここまで白が出てしまうのはなかなか珍しい気がする。本来ならば、書かれた文字数からだいたいの本の幅がわかってそれに合わせて背幅が決まるわけなので、よっぽど何かがなければ、これほど違わないはずなのである。で、当たり前に考えてみるに、文庫の終わりにも書かれている
「この作品は昭和四十八年二月晶文社より刊行されたものに、大幅加筆したものである。」
通り、相当のページ数が増えていると考えられるわけで、実際のページ数が384ページで本の厚さが16ミリ、これに前半部分に口絵(写真)ページが1ミリほど入っているので、その1ミリを抜いて、本来の文章だけで15ミリの厚さ。実際の背表紙の幅が11.5ミリなので、なんて考えていくと89ページから90ページ分が加筆されたというようなことになって、だいたい400字詰め原稿用紙で164枚ぐらいになるというような数字が出てきた。
ほんとに結構加筆されている。ってこれも本書の前半部分に書かれているんだけど、晶文社刊が出てから10年後にこの文庫が出るわけで、それこそマルクス兄弟もあの頃とは違い、ビデオやディスクで見れるようになり、細かいところまで訂正や加筆がされたのだと思う。よってこの枚数、厚さになったのだろうと思うのだが。解せないのは、この辺のところもある程度はわかるはずで、よっぽどギリギリの執筆作業で進行していたのか、それとも編集者と小林さんとのコミュニケーションがうまく取れていなかったのか、あ、単純に編集者の背幅の間違いかもしれない。きっと5ミリ見誤ったのかもしれない。なんてことを、どうでもいいことをまた考えてしまったのだが(笑)。で、この答えの出ないことを考えて何かの足しになるのか、世界平和につながるのか、我が家庭の生活が潤うのか、私のストレスが多少なりとも和らぐのか、和らぎそうで、やっぱなにやってんのか、ってことで、リバウンドが激しいだけじゃないのか、、、。
きちんとした背表紙で復刊希望「世界の喜劇人」!!(苦笑)