SALT,SUN & TIME

ローザンヌ備忘録

ブラック・ホークの思い出

って音楽の話ではないので気をつけてください(笑)
ある日、森の中、熊さんに(熊さんに)、出会った(出会った)♪(ってうたってる場合じゃありませんでした)
ある日、森の(ってしつこい(笑)、ブラック・ホークに出かけていくと入り口のすぐそばに長髪のヒッピー風の兄ちゃんが、うまそうにビールを飲んでいた。
ぐるっと見渡すと空いてる席は、そのお兄ちゃんの隣しかない。何の躊躇もためらいもなくその空いてる席に腰を落ち着ける私。いつものアメリカンを注文し、喉が渇いてたもんで、もって来てくれたお冷を一息で飲み干した。
「ふーっ」
と一息つくと、なぜか横からビールのビンがにゅっと現われ、その空いたお冷のコップにビールがつがれる。
「へっ」
と隣のヒッピー兄ちゃんの顔をのぞきこむと、その兄ちゃんは、ビール瓶をテーブルに戻し、ビールの入った自分のコップをとり
「乾杯」
といった感じで持ち上げたのだ。
わたしもつられて、ビールを注がれたコップを思わず持ち上げ
「あ、どうもすいません」
なんてそのままコップを口に運んでしまった。
言葉を交わそうと
「よくくるんですか?」「どっからきたんですか?」
なんて聞いてみるも、その兄ちゃんは頷きながらにこにこ笑うだけ。
なんだか薄気味悪い気がしたんで、そのままかかってるガーランド・ジェフリーズの「アメリカン・ボーイズ&ガールズ」に意識を集中することにした。

すると隣の兄ちゃんは、ビールが空いてしまったらしくもう一本注文して、それがやってくると、またもや私のコップに注ごうとするんで、
「いや、も、もう、いいです、いいです」
と、なんだかこれ以上関わりあうのがはばかれる雰囲気だったんで断った。
音楽の方、次にかかったトム・ヤンスの「子供の目」に耳を傾けることにした。

少し経った頃、A面最後の私の好きな「ストラグル・ダークネス」のヤノピの前奏が始まると、隣の兄ちゃんはポケットをごそごそとし始め、中からじゃり銭を出し始めた。気になって見てみると、どうも金が足りないようなのだ。そして、こちらを向いてさっき話しかけたときと同様に、にこにこ笑ってる。
「むむむ、これは、オレに出せっていってんのか?、、、、一杯、もらっちゃってるしな、、、」
仕方なく、「じゃ、わたしが」って、足りない分を出すことになってしまった。
その兄ちゃんの会計を済ませてる後姿をみると、靴はぼろぼろ、ずぼんはしわくちゃ、シャツもよれよれ。長く伸ばした髪は、後ろで少しかたまっているのだった。ヒッピー風と思ったのはまちがいで、いや、まちがいではなく、ヒッピー風ではあったが、浮浪者にほど近いお兄さんだったのであった。
うーむ、そういう方法でもってよりたくさんビールを摂取するわけなのか。勉強になった。とそれ以来、あまり金がないときは、友人に多く飲ませて、多く払わせる私になったのであります。