SALT,SUN & TIME

ローザンヌ備忘録

崎谷よ、今何処

というわけで、早速谷崎を読み返す。「人魚の嘆き」ってこんな話だったっけ?とまずはびっくり(笑)。やっぱり読んでみるもんですな。明らかに「人魚姫」のあの話が頭にあったのですが、うーん、流石に谷崎、いい感じに裏切ってくれてまして、なんとも新鮮でした。[
それにあの挿絵の肉感的なこと、セクスィーをとおり越し、エクスタスィーを感じさせてくれます。その挿絵にも影響を与えたビアズレイの名前が、本文中に出てくるのにもびっくりでした。あの頃から(百年ほど前)極東日本の作家や絵描きに影響を与えていたんですな、考えてみると! それが現在まで、いやきっと未来永劫にわたって素晴らすぃーと語り継がれることでしょう。で、併録の「魔術師」、これがまた、凄いお話でOhシャンゼリゼ!(旧い)でありました。摩訶不思議な公園、そこに集う人々、美しき魔術師、そしてその話の筋に、結末に瞠目、刮目でした。
うーん、これだけじゃ物足りない、谷崎は後を引きますな。

次に手にしたのが、種村先生編集の「美食倶楽部」。これを読み返すのも随分と久しぶりとなります。そういえば、その昔、大正期のぶっ飛んだ谷崎の作品をアンソロジーかなんかで読んでるうちに、もっと読みたくなりまして、高円寺の古本屋「都丸書店」で、中公の新書版サイズの谷崎全集、この装丁がいいんでげすな、箱入りで。棟方志功の版画があしらってありまして、確か?を見つけて買った時のこと、そこのダンナが「大正期の谷崎は面白いからね」となにげなく言ったんでした。流石、古書店主、よく知ってるなぁ、と感心した覚えがあります。
ま、それはいいんですが、そんな大正期の作品の中から種村先生好みの耽美で妖異な物語を採っている短編集でありまして、機会があれば読んでいただきたい一冊でありますが。
少しいらぬ説明をさせていただきますと、初めの一遍「病蓐の幻想」がふるっておりまして、虫歯の痛みが大地震の幻想にまで発展するというなんともスペクタクルな話なのであります。関東大震災を予見していた! 何ぞとも言われているようですが、あながち嘘でもないような気になってしまうその内容たるや、あーた、凄いですよ。痛みを延々と病的に音響から色彩として例えてみたり、震災時の逃げ道を微に入り細に入り考えるというなんとも神経症的な描写が圧巻でありまして、常人には思いもよらない、尋常でない何ものかが取り憑いているとしか言いようがない描写が続くのであります、はい、ほとんど病者(わかりますね(笑)であります。これが百年も前の話ですぜ、ダンナ。新しい書き手の皆さんが、これらの物語、大谷崎になる前の物語の数々をじっくり読むことによって、きっと新しい何かを発見するんじゃなかろうかと思っているのでありまして、って、余計なお世話か(笑)。
そして、次に控ぇ〜しは「ハッサンカンの妖術」げすよ。これが確か「宇宙の果てまでつれってって」的な壮大な話だった覚えがあるんですが、楽しみでげす。
それにしても、キノコホテル聴きてぇ〜、見てみてぇ〜。そんじゃまた。